mouseionのブログ

アニメ感想中心だけど、たまーに色々考察します。

安保邦彦『明けない夜の四日市』 雑感 コロナ禍にある今だからこそ読むべきかもしれない。


題名の通り四日市にまつわる事件といえば四大公害の一つである四日市ぜんそくだが、それを当事者企業に勤める立場の人とその家族の想いが物語の中心だったと思う。
主人公の幸吉が三菱化学の前身である会社に勤めててそこで昇格試験を受けないか?と打診を受けるんだけど前後してその会社が協力関係にある石油コンビナートの会社が四日市ぜんそくをまき散らす公害汚染をやってて四日市市長の九鬼というクズ野郎も一緒になって徐々に市民が蝕まれていく状況にあって左遷と栄転という飴と鞭を使って社員の忠誠を図る試みが企業にあって幸吉は父親が公害汚染の集団訴訟原告団の一人だったので懐柔目的で強く推薦したという背景があった。で工業高校卒だったからどうしても給与に差があって大卒が貰うような高給を貰うために、家族を養うために企業側に立って行かなければならないというような感じで。そんな中長女と次女が四日市ぜんそくじゃないかという疑惑に気付かされて初めて昇格試験を受けてどんどん企業側に取り込まれていくか父親のように原告団に立つべきじゃないかといった後悔とか色んなものが混ざり合っていくのを感じつつ、最終的に妻の実家のようなきれいな空気環境を整えるしかないと思って妻の要望のままに大好きな煙草を辞めて高い空気清浄機を購入する事に決定したみたいなオチだった。
ここで気になるのは結局一社員じゃどうしようもない。幸吉の先輩社員雨元という同僚が知り合いがとある言動を行った事によって会社に睨まれて最終的に物凄い嫌がらせを受けて辞めて行った事から会社内に味方を作っておき更にあんまり出しゃばった言動はやるべきじゃないと釘を刺してくれてたのがね。
いくら社稷となっても当時のご時世では社畜にならざるを得ない。幸吉のもう一人の同僚芝野のように上司におべっかを使うような人間でないと企業からどんな酷い目に遭わされるかと想像だにしない仕打ちが待っているのは間違いなくてそう考えると幸吉が取った判断は現状では最善であり最低限の選択だったと思う。誰だって公害まき散らしたくないよね。でも九鬼市長のような目先の利益にしか目が行かない人が上に居てそういう人を崇めないと生活できないからもうこれは仕方ないような気がする。当事者意識ってのは被害者も大事だけど加害者サイドも何等か考えないといけない部分がある。それに気付かされる本書だったなと。
序盤が凄く学術的な感じだったから小説だとは思わなかった。もしアレならそこ読み飛ばしても大丈夫だと思う。幸吉という男性社員の話が出始める所から読み始めても良いんじゃないかな。まあ若干尻切れ感があるけど面白かった。面白かったというか後半は自分の子供が苦しむ様を間近に見て親としてどう判断するべきか葛藤する部分が結構泣けるね。
あとがきの方でその後四日市ぜんそくの問題はどうなったか簡単に簡潔に書いてくれてるので上手い事200ページ前後でまとめなさったなって思った。
大体1,2時間あれば読めると思う。