mouseionのブログ

アニメ感想中心だけど、たまーに色々考察します。

宮城谷昌光『湖底の城 第九巻』その他 雑感 伍子胥は比干となり范蠡は微子啓になった。

湖底の城 九巻 92点

とはいっても范蠡はどちらかというと其子になった、という方が分かり易いかな。
ただ宮城谷先生がわざわざ比干と共に比較した忠賢として微子啓を挙げたのであえて范蠡を彼に準えた。
相変わらず一巻から続けて読んでいくと最終巻の手前まで面白くて本が進むんだけど、今回のような機会でもない限り積み書してしまうのは僕の悪い癖だ。
結果本が出てから2年ぐらい埋もれてしまう事になったけど不思議と本の内容はよく覚えている。展開的には夏姫春秋に似てる、というのもこちらも絶世で傾国の美女を他国へ逃がして幸福な人生を歩むというような話になるので。でも単巻だと上手くいくものでもシリーズが続くとあっちやこっちに傾くからその辺は相変わらずの趣という感じ。

王家の風日 80点

そういえばこれ感想してなかったなとせっかく比干と微子啓が出てきたので挙げて見たと。
この話は呉越戦争から更に500年ほど前の話になるのかな。夏桀殷紂といった故事があってその殷、本編では商人の由来となった商を舞台に紂王(受だったかな)がいかにして暴君になっていったかという過程を前半に後半は太公望呂尚を手に入れた周の文王と武王が、兄としてずっと弟に忠告し続けた其子の恐れる通りに商が滅亡してしまい弟も呆気なく死なせてしまった、その責任を感じて一人恥というか先祖に申し訳ないといった気持ちなどが逡巡する様を描いた。その中でただ一人商の王族として最後伝説にある朝鮮へ逃れて其子朝鮮を打ち建てるという話になったけど、相変わらずこちらもどうして滅んだのかというと、宮城谷小説でお馴染みの前半期が名君で後半期になるとある理由から暴君になった、その過程にあった傾国の美女が妲己ちゃんだったという事で、これまた宮城谷小説ではお馴染み一人の女によって国が滅んだという話だった。夏桀も確か女で国が滅んだんじゃなかったかな。でその国ですら名臣が君主を諫める場面が多々あったのに滅んだのは君主が蒙昧だったのが原因だと言えなくもないけど結局のところ、女に溺れるような君主なら何しても滅ぶと思う。晋文公の父である献公も前半期は名君であったが晩年は女に溺れて嫡男を処刑して重耳らを他国へ奔らせたから。唐の時代にも後半期に楊貴妃を手に入れてから名君で知られた玄宗が国を傾けてその後滅亡したのを見れば中国における傾国の美女はその威力は絶大でその元祖となったのが妲己ちゃんだったという事(夏は伝説だから商と違って女性の名前が特に出てなかったと思う)。
本書は僕が生まれた年くらいに出版されたものだったから結構古い。古い中で湖底の城とか呉漢、楽毅などの名書と大差ないっていうのが宮城谷昌光の凄い所だった。要するに何十年経っても色あせない魅力があるんだよなと。