mouseionのブログ

アニメ感想中心だけど、たまーに色々考察します。

湊かなえ『ブロードキャスト』 雑感 コミカライズでイメージが強くなって一気読みした。


いつもと異なる湊かなえの学園青春物。いやこの人いつも殺人だったり欺瞞とか虚構とか人格破綻とか好きじゃん。
まさかこんな素敵な物語書けるとは思わなかったんですよ。で最初冒頭でお腹いっぱいだった。その後しばらくしてコミカライズが連載されて読んでイメージがすっと入ってきてそれからはもう休む暇もなくすんなり読めた。この人の作品って冒頭で躓くんだけど、読み進めると早いんだよね。
中学時代親友と共に陸上部をやってたけど事故がきっかけで走れなくなった主人公圭祐が高校で脚本家志望の正也という中学時代の同級生と放送部に入部するって話でこの辺はコミカライズの1話を読むと更に分かりやすい。その放送部は去年までいた顧問が凄い人でその人の力もあって全国9年連続常連校だったけど、去年の暮れに海外ボランティアに行くために辞めたと。それがきっかけで2年生組と3年生組で揉めるようになって大した作品も作れず、特に月村部長がお兄さんが凄い成績を収めた人でその兄の意志を継ぐために張り切り過ぎて退部者が続出した結果ダウナーな感じの部になってしまったそうで。そこへ新入生として二人、あとで久米さんという元陸上部でイジメられてスマホ恐怖症の女の子も入部してっていう、実にテレビドラマとかテレビアニメ向きの作品になっていった感じ。港かなえって女池井戸潤でこの人作品発表するたびに売れるしテレビドラマ化される人気作家で、やっぱりこの手の手法は上手いね。もうすぐイメージが沸いて惹き込まれた。放送部でラジオドラマを作る中での切磋琢磨や意見衝突なんていう、ありていに言えば学生らしい青春モノだなという語彙力ないんでパッと思い浮かんだ単語しか浮かばないのが個人的に辛いけども、要するに面白かったという事です。
あと、決勝で皆で他校の作品を観覧するシーンに登場したそれぞれのエピソードはもっと話広げて湊かなえ短編集として出しても面白いのではという題材がかなりあった。何ていうの?懐の大きさじゃねえな、引き出しの多さっていうのかな?まあネタ豊富にあって良かったので。
話を戻すけど、物語の後半では決勝を経て全国大会に出場が決まったというのに圭祐の心はもやもやしたままだったり現在の顧問秋山先生の態度の悪さが気になったりと色々と不穏な空気が流れてたね。東京へ行けるという事にばかり感けて受賞作品のケンガイの話はそっちのけだった3年生の無能先輩たちに正也が思い思いの丈をぶつけてようやく我に返った月村部長たち5人組は東京へ行ってもそれを後輩が来年に向けて作品を制作できるように手助けしないといけないと、今までの浮かれ気分を打ち消す流れになったのは脚色だけど良いと思った。
その無能な三年組のうちヒカル先輩は割とまともだったね。久米さんという競争相手が見つかると突然演技もまともになってずっと練習してたんだという描写もあった。そしてケンガイの選評について審査員の的外れともいえる意見がグサッと刺さったのか過去のイジメの事をぽつりぽつりと話し出した時、家族の絆が強ければ強いほど家族に自分がイジメを受けてる事を打ち明けるのには相当勇気がいる事を言ってて納得した。実際打ち明けられずに自殺したって話をよく見るもの。そうこうする内に2年生と3年生との間にあったわだかまりも溶けて行ってた。要は意見をぶつけ合う仲になったという事。最後は白井先輩が新部長で収まった。
国営放送JBKってNHKの事だけど、NHKだから爆発オチとかは駄目で『ありがとう』のような感動とか絆を題材にした作品の方が老害で堅物な審査員たちの老いた目には届きやすいんだろうなって僕も思ったり。
様々な苦難や挫折を乗り越えた先には未来があるなんてありきたりなエールもあるけど、これから踏み出そうとする未来に誰のエールも届かない、といいながらもとりあえず作品に押されて放送部か陸上部かを選び兼ねてた圭祐が放送部を選んだ終章は正に集大成だったと思う。久米さんをイジメから解放したし、正也が思ってたより熱い奴だったし、その熱さがこれまで疑問に思っていた陸上部に関する疑念やわだかまりを解いた圭祐が最終的に親友の山岸良太の疑念を払拭していったのは放送部というよりも一つの作品制作を経て、そしてその審査会を経て変わって行ったんだなと。それにしてもこれ続編書こうと思ったら書けそうだね。圭祐たちの2年目って事で。コミカライズも連載した事だし、まあコミカライズ独自の展開を湊かなえが考えていくってのもありではある。