mouseionのブログ

アニメ感想中心だけど、たまーに色々考察します。

湊かなえ『未来』 雑感 子供の幸福は親次第だね。

未来、440ページくらいあったかな。
未来からの手紙を受け取った二人の幼い少女が必死で生きた証って感じだった。昔の湊かなえを彷彿させる内容だった。つまり少年少女の葛藤を描いた物語だった。いや最近はコーヒーとか登山とか故郷に帰って~とか震災エッセイのようなものが中心だったからこんなに本格的な奴は久し振りだった。
人の親ってのを考えた時に自分は幸せだったかを思い巡らせる。自分にとって両親というのは喧嘩も多かったし離婚の話も散々したとか聞いたけど母が言うには僕が離婚しないで!と発言したのがきっかけで仲が悪いながら上手くやっていたんだとか。ちなみに親から手を上げられた事は一度も無い。まあせいぜいシコってた所を父親に見られた位か、あれは結構ヤバかった。母にもそれとなくそれを匂わせるエピソードがあったけど知らぬ存ぜぬを通し切った。まあバレてるだろう。それはそれとして、本作もバレなければ分からなかった真実が続々浮かび上がってくるといった話だった。篠宮先生の過去なんかは法律とかを何も教わらなかった事や自分をネグレクトして出て行った母親が目を掛けて育ててくれた祖母が死んだ途端帰って来て開口一番に遺産は私の物だから貯金渡せだった事に怒りしか覚えなかった。結局残りの2年間をコーヒーショップでバイトしたりAVに出る事で食い繋いだ話があったけど、これを教師になった時にいじめっ子に制裁(作文大会で上位にしなかった)を加えたらその母親(PTA会長だったかな)が乗り込んできてAV出演の話を出して脅迫したり学年主任も彼女を庇うのでなく同調した事が悲しくなった。子供を盾に同僚を一方的に貶したと僕は見る。しかし、その母親は篠宮先生にキレた本当の理由が自分の夫である医者が医者仲間で彼女のAVに出演してビデオ撮影をしていた事だった訳で、つまり夫の不倫相手が篠宮先生だったという事で、篠宮先生は知らなかったとはいえ、大変な裏切りだったから、でも娘の手前夫と別れる訳に行かなかったから篠宮先生に類が及ぶように啖呵を切って見せたと言い換える事が出来るけど、名誉の為もあったかもしれない。
しかしこの小学校は凄い。まず林先生という新任の割とまともだった先生が本作の主人公の一人である章子の母文乃に恋愛感情を抱いて最後は警察沙汰にまでなったし、篠宮先生はAV出演の過去があった。PTA会長の一人娘の実里はイジメっ子で章子やもう一人の主人公亜里沙をイジメてたっていう。イジメはいじめられる側に原因があるというけど何度も言う、それは嘘。性善説を見れば環境によって酷く汚れる事もある。その点この実里は悪気なくイジメを行ってたので親のネグレクトだと分かる。しかも告白すれば父親は援助交際や不倫を平然とやる人間のクズだし、母親も名誉を重んじるばかりで娘の教育を学校任せにし過ぎてたと考えれば、いじめる側に原因があるのは明白だったしね。
タイトルに書いた子供の幸福は親次第というのは結局親が子供をしっかり見ているかどうかで子供の人生の半分が決まる事を示唆している、としたかったから。
然るにその親たちにも子供時代があって人格形成に強く影響を与えたであろう親の存在がある。本作では章子の父母である良太と文乃も親によって人格形成が為されている。良太の父母樋口は共に健在で良太と瓜二つの顔の曾祖父が為した財で仲睦まじく恵まれた暮らしをしていた。文乃は元は森本真珠(まじゅ)と言って本作の輪廻の原点とも言うべき森本誠一郎の実の妹だった。森本誠一郎は父親が県会議員として女性ファンの多い後援会もあるほどの立派な人だったが、表向きは。裏の顔は実の娘である真珠を小学生の頃から性的虐待をしていた悪魔で、それをたまたま見た誠一郎はその自殺した母親同様に狂ってしまったみたいだ。しかし樋口良太、つまり佐伯章子の父との出会いから正気を取り戻してついには父親から妹を救いだしたい正義感から彼を殺す事に決めた様でその手伝いを良太がさせられる事になった。でも放火は重罪だったし樋口家の事もあった。決意して臨んだたら真珠が全ての罪を被ってしまっていたという所(実際は父親は睡眠薬を盛られただけ、誠一郎も服毒自殺だったが)。その後贖罪の気持ちと元々相思相愛だった二人は結婚して樋口姓を捨てて孤児となった真珠いや文乃の持つ佐伯姓を以って他の街に移り住んだ、という事があの、故人となった父良太のフロッピーディスクに書かれてあったようだ。
死んだ兄誠一郎に瓜二つか面影を感じた文乃は自分が売春させられる立場に置かれても早坂の言うままに売春を行っていたが、最後は娘を守る為に娘の罪を被る事にしたみたいだ。
何かどうしようもなく辛い話だし周囲の大人が全員汚らしかった。ちなみにもう一人の主人公である亜里沙はその早坂が経営する人材派遣会社の社員である須山というクズの実の娘で、その弟は美少年だった事もあり地元の医者(恐らく実里の父親か)に買われてた模様。そして姉とドリームランドに行く約束をした翌日に自殺。何か報われない話が多かった。
亜里沙を救ってくれた先輩の智恵理もまた義父に性的虐待を受け続けて母親は見て見ぬふりをしていたのにそれとの子供を宿すと突き落としたとかいうし、今で言う所のガチャに外れると皆不幸になるそういうテンプレ展開が目白押しだった本作は、今までの物語の中でも一際報われなかった。
個人的には良い親ほど早死にするのかなという感想。とはいえ章子の父良太の話は何か辛いというかもうどうしようもなかった。放火の罪も逃げて償わなかったけど、その贖罪で文乃と駆け落ちしたし、娘である章子への愛情も澱みなく注がれた感じで実際に良いお父さんだった事が窺い知れる。あの未来の自分の手紙はガンえ入院中の父良太が章子の担任だった篠宮先生(文章は篠宮先生とその恋人原田くん、そして父良太によるもの)を通じて困難にも打ち勝って欲しいという想いを綴ったものだった。これを読んで冒頭のドリームランド行のバスに乗り込み、そして色んなエピソードを介して逡巡して目的地に着いた二人は結局互いの親を殺す事が出来なくて殆ど未遂で今に至るみたいな感じで終わった。周りの大人に助けて貰おうよと二人で叫ぶ辺りはどういう心境だったかは分からないけど、多分助けて貰うというよりはむしろ今の状況を誰かに伝えたかったとかその辺なのかなと思ったり。
やっぱり面白かったね。不幸ばっかだったけどその中に一抹の幸福に巡り合えましたみたいな。
子供の幸福は親次第だけど、親の幸福は誰次第なんだろうね。文乃は愛娘の為に復活して人として母親としての人生を歩んだから“親の幸福は子供次第”なのではないかと思う事にする。相互関係というか共依存関係とも違う、ただ平凡でありきたりな幸福な家族っていうのが主目的だったのかなとかふと思い至った。