mouseionのブログ

アニメ感想中心だけど、たまーに色々考察します。

遠田潤子『冬雷』 雑感 ムラ社会ってホントクソだなと思った。

あらすじ(ほぼネタバレ)

施設から代々鷹匠で塩の生産で知られる名士の家に養子として引き取られた小学生の代助が、中学高校に上がるにつれてその後継者として自覚を持っていったのだが、高校生の時にその名士の家に実子が誕生してしまい、結果後継者の枠組みから外されてしまう。その後義父の雄一郎から鷹匠として優秀になった代助が惜しくなり鷹の世話係として一生町で不自由なく暮らさせてやると言われたが、ちょうどそのタイミングで雄一郎の弟で神社の宮司でいつも代助に新設な倫次から相思相愛の恋人だった真琴との婚姻を勧められる。それに応じようとした矢先、事件が起こった。雄一郎の待望の実子翔一郎君が行方不明になり、その最後の目撃者だった代助が重要参考人として警察に捕まえられてしまったのだ。行方不明の弟は最終的に氷室で遺体となって見つかるのだが、証拠も証言もないのに最後に一緒にいたからと養子としてムラ社会で有力者の後継者として畏怖された人間が弟の誕生と共にその座を追いやられた恨みから殺したのだろうと町中で噂になり格好の冤罪者に成り果ててしまう。しかし証拠不十分のために釈放されるが、その後義理とはいえ7,8年共に暮らしてきた両親から絶縁を叩き付けられてしまう。犯人ではないし、実際犯人は別にいたが、犯人扱いされて何を言ってもお前が殺したの一点張りで何も出来ずにそのまま逃げる様にこのムラから出て行く事になった。
その時に相思相愛で彼の無実をひたすら信じ続ける真琴と一夜を共にしてそれから共に夜逃げというタイミングで真琴は神職があるからと彼の申し出を断ってしまった。
その後色々と転々した後に鷹匠の仕事を請け負う会社の社員となって一息ついた所へ、何故か中学高校時代からストーカーの如く付いてくる愛美という女が執拗に結婚を申し込んでくる。しかも自身が施設出身者で今はただの一人の男だというのが分かったと人を不快にさせるような言動を繰り返す女がである。
身体の関係は一度もなく、ただ一度睡眠薬を盛られてレイプされた位だが、代助にとっては耐え難い苦痛であった愛美が、その後自殺していたのが分かる。
事件から12年後程経ち、30歳となった代助はその前月に自殺した愛美の兄がストーキングして来る事に気が付く。
彼によると代助の弟の十二回忌とかで集まりがあるという事と、妹の彼氏が妹が死んだのに線香の一つも挙げない事にイライラを募らせていたとか。
そして12年前に逃げる様に出て行ったムラに戻って、元恋人真琴が氷室にいた弟を遂に発見するも逆に警察から犯人扱いを受けている事を知る。事件の整理の過程で愛美の妄想日記を調べて行くうちに亡き弟が何者かに殺された事実を知る。愛美が二度中絶の末自殺した事も。
その後愛美の父母が事件に間接的に関与してる事が分かり、父親はその息子龍に殴り殺されてしまう。しかし不意の事故として片付く。
そうして愛美の本当は産まれてくるはずだった子供を中絶させたのは誰かという事になると、真琴が母親の形見として貰っていたがその後盗難にあったはずのビデオが愛美の部屋で発見し、また日記の破られたページを愛美の父親が所持していた事を知ると、事件の全貌が明らかになったのだ。

感想

要するに今回の事件はムラ社会が原因だった。
代助の弟を無残に手を掛けたのは愛美であり、愛美は代助を好きと言いながらも真琴の父親倫次とデキていた。子持ちの五十路と女子高生の淫らな関係であった。一回目の中絶はその時によるが、二回目は父親が分からない。恐らく逆レイプした時に孕んだのだろう。しかし、真琴との子供結季ちゃんといい、代助はたった一回の契りで相手を孕ませるのかと思うと想像だにしない絶倫さを覚える。
話は戻るけど、愛美は巫女である真琴に対しても強い憧れを持っていて、勝手に真琴の装束を盗み出して、いつか見た真琴の母親の演舞を見て自分も出来るはずと舞を踊っていた所を翔一郎君に目撃され更に馬鹿にされてしまう。普段から町中からイジメを受けていた愛美だったが自分より年下の3,4歳の子供にまで馬鹿にされたとあっては腹の虫唾が走り凶行に及んでしまうというもの。
その話を愛する愛美から聞いた倫次は、ムラ社会の秩序を守りたいとするムラのまとめ役であった浜田郵便局長と共謀して代助を犯人に仕立て上げる事にしたのが、事の顛末。
しかも倫次が後に疑われる愛娘真琴を庇わなかったのが、実は真琴が門外不出として母親に託されたビデオの正体が倫次の兄雄一郎との逢瀬(セックス動画でない)を描いたプライベートビデオだったためだ。つまり真琴は倫次の実子ではなく兄の実子だったのが分かったのである。
こうした背景から意気消沈した倫次が彼を慰める愛美とデキてしまったという話で、中々にドロドロしてて2時間サスペンスみたいな展開で笑ってしまう。
しかし愛してるといいながら、最後は愛美に中絶させて、でも自分の子供である真琴は出産を許した(その理由が無実の罪で殺人犯扱いにした代助への罪滅ぼしだった)ので、愛美は怒り狂った。結果翔一郎君の手にわざと真琴の巫女装束にあった菊綴を握らせて犯人に仕立て上げようとしたみたいだが。
しかし今回の事件、一人のメンヘラがやった事とはいえ、町ぐるみで殺人を隠蔽し、無実の人間を冤罪に陥れたのだから、ムラ社会ってホントクソだなと思った。

これを計画した倫次は最後にある人物によって斬殺されるのでここはホッとした。
でも結季の誘拐とその結末の下りはちょっと強引だった。でも凄く惹き込まれたし面白かった。
最後は代助にずっと操を立て続けた真琴がいつか一緒に町を出ましょうみたいな事を囁いたシーンは良かったな。
その直前にあれだけ殺人鬼呼ばわりしてきた雄一郎とその妻京香が手のひらを返したように気持ち悪い態度を取って来るし、血を分けた実子である結季ちゃんを引き取って自分たちの子供として育てると言ってきた時はどのツラ下げて言うとんのじゃ!って僕が怒りたくなった。
でも、翔一郎に対してつながりを持った代助が、実子の結季ちゃんの目元がそっくりとその母で恋人の真琴に言われて元気が出た様で、彼女の言われるままに町を出て行くのかもしれない。そんな終わりだった。
正に浅見光彦辺りのミステリー小説にありそうなファンタジーな作品だった。
ちなみに冬雷(とうらい)は、そのムラに古くから伝わる伝承で、代助が結季ちゃんを救助した時に溺れて死に掛けた時に感じたもの、民間伝承の伝えを聞いて勝手に色んな事を解釈してたけど、それはこの事件には特に関係ないけど、自身の出生の意味を考えたという点で上手く使ったなとは思った。

2時間30分位あればスッと読めると思う。
誰かを想像して読むと入り込めやすい。この遠田潤子氏の作品をもっと読みたいなと感じた。それだけ凄く良い作品だった。